ペルチェモジュール・システムの設計方法

Bruce Rose/著

この投稿では
1.ペルチェモジュール・システム
2.ペルチェモジュールの初期の選択基準
3.ペルチェモジュールの給電
4.ペルチェモジュールに提供される電圧の制御
5.全熱源の説明
6.概要


ペルチェモジュールは熱電気モジュールとも呼ばれ、対象物の温度を精密に制御する必要がある場合に、効果的な温度管理ソリューションを実現する中枢的存在となります。 ペルチェモジュールは対象物の加熱、または冷却のいずれにも使用できますが、最も一般的な使用法は、対象物を周囲温度以下に冷却することです。 ペルチェは通常、完全なシステムではなくコンポーネントとして提供されるため、適切に統合しモジュールを駆動するには、ある程度の設計作業が必要となります。 ペルチェ熱システムの設計は難しくはありませんが、アプリケーションを確実に成功させるには、熱電モジュールの特徴の基本的理解を得ておくことをお勧めします。 この議論をシンプルにするため、ペルチェモジュールが対象物を冷却するという前提で話を進めましょう。 ただし、対象物を加熱する場合の設計の考慮事項も、ペルチェ・デバイスに給電する電圧と電流の極性が反転する(モジュールを通した熱流の方向も反転します)ことを除けば、同じです。

ペルチェモジュール・システム

下図は、対象物の温度抑制にペルチェモジュールを使用する場合に必要な基本的なサブシステムを示しています。 ペルチェモジュールはこのシステムの中心的な要素ですが、その他の要素も必要です。 熱電モジュールは対象物からの熱を伝導させることで冷却をおこないますが、ヒートシンクはペルチェモジュールを通して伝導された熱と、 電源から発生する熱の両方を放熱する必要があります。電源がペルチェデバイスを稼働させるのに必要な電流を供給し、 熱モニターに接続した外部フィードバック・ループによって、システムは冷却する対象物の温度を正確に制御することができます。

標準的なペルチェモジュール・システムの構成

ペルチェモジュールの初期の選択基準

ペルチェモジュールは、通常、アプリケーションの熱要件に基づいて選択されます。ここから、必要な電流とそれに関連した駆動電圧が決定されます。 最も重要な熱条件は、ペルチェモジュール全体を伝導する熱、ペルチェモジュール全体の最高温度、そしてモジュールの高温側の最高温度です。 ペルチェ製造メーカーは通常、こうした熱条件を満たし、一連の供給電流および電圧の動作値を実現する数々の熱電モジュールを提供しています。 ペルチェモジュールの選定に関する議論について詳しくは、Same Skyの「ペルチェモジュールの選択方法」ブログ記事をご覧ください。

ペルチェモジュールの給電

ペルチェモジュールを特徴付ける最も簡単な性質は、その消費電流です。 アプリケーションに対して必要な電流レベルは、選択されたペルチェデバイスの特性曲線を評価することによって決定されます。 必要となる電流に影響する主要なパラメータは、伝達される熱パワー、維持される温度、モジュールの動作温度です。 ペルチェモジュールの特徴は電流で決定されますが、制御される電圧源を使用してデバイスに給電し、必要とされる駆動電流を提供することができます。 目的の電流を提供するために必要な印加電圧は、選択した熱電モジュールの仕様グラフを見て決定します。(例を見る)。

ペルチェモジュールに提供される電圧の制御

一部のアプリケーションでは、最大限の冷却を継続的に行うためにペルチェモジュールを動作させることがあります。 このような場合、ペルチェデバイスに対して一定の電圧がかかり、結果として生じる負荷電流と冷却は、データシートの性能グラフに基づいて決定することができます。

定電圧のペルチェモジュール・システム設計

ただし、その他のアプリケーションでは、ペルチェモジュールは対象物を制御されている温度で維持するために導入されています。 これらの設計は、熱電対、固体温度センサー、または赤外線センサーなどの熱センサーを利用して、対象物の温度を監視します。 温度データは熱制御ループを介してフィードバックされ、ペルチェモジュールへ印加される電圧(または電流)を調節します。 熱電モジュールに印加される電圧を制御するための一般的な方法は、標準電源の出力上にパルス幅変調(PWM)ステージを含めることです。 多くの電源では、幅広い出力電圧を簡単に調整する機能を持ち合わせていないことから、この外部PWMステージが必要となります。 さらに、PWMステージの出力電圧はおよそ5%以下のリップルを示すようフィルタリングもされなければなりません。 高いリップル電圧でペルチェモジュールが損傷を受けることはありませんが、エネルギー消費効率(COP)が減少し、 冷却する対象物に電気的なノイズの問題が発生することがあります。 熱制御ループの設計は、必要とされるループ幅が低いことから、様々な形態で導入可能です。 さらに、温度制御システムが対象物の冷却と加熱の両方で必要となる場合は、制御された電圧または電流の極性は可逆式でなければなりません。

PWMステージ付きペルチェモジュール・システムの設計

全熱源の説明

ペルチェデバイスは、電力が供給されるとモジュール全体に熱を伝導します。 この熱の伝導に加え、熱電モジュールは印加される電力によって、動作中に熱を発生します。 ペルチェシステムの熱ソリューションでは、ペルチェモジュール全体に伝導される熱と、ペルチェモジュール自体が発生させる熱の両方を放熱しなければなりません。 低COPで動作するシステムでは、ペルチェデバイスの電気的動作によって発生する熱が、その熱伝導よりもかなり大きくなってしまいます。 周囲温度とヒートシンク・ソリューションの効率を組み合わせることで、ペルチェモジュールの最高動作温度とシステムのパフォーマンスが決定します。

ペルチェモジュールの標準的な熱流

概要

ペルチェモジュールを採用したシステムは、対象物の温度を制御するのに非常に効果的な方法です。 これらのシステムはどの方向でも動作可能で、電気ノイズや音響ノイズがより少ないにも関わらず、 多くの場合小型、軽量、かつエネルギー効率に優れていることから、従来のコンプレッサーや散逸型ヒーターベースの温度制御構成と比較して利点があります。 また、ペルチェモジュールのアプリケーションを構成するために必要なほぼすべてのサブシステムで、標準コンポーネントが使用可能です。 これにより、ペルチェモジュールはお客様の次のプロジェクトの熱管理設計において、非常に興味をそそられるオプションとなります。