技術解説 オペアンプの応用-微分回路
アナログ回路設計
オペアンプの応用-微分回路
微分回路は直流成分の除去やパルスの検出、ハイパスフィルタなどに利用されます。この章ではオペアンプと抵抗、コンデンサを組み合わせた微分回路を紹介し、シミュレーションによる動作検証を行います。
微分回路
微分回路は、反転増幅回路の入力抵抗をコンデンサに置き換えた構成で、積分回路のコンデンサと抵抗を入れ替えたとも言えます。減算回路の基本回路を下図に示します。
微分回路の動作
積分回路をコンデンサCと抵抗Rを入れ替えると以下式が成り立ちます。
よって、入力Viに対して微分され出力Voが導かれます。
※但し、実用回路では少し工夫が必要になります。電気的に見ると微分はスパイクノイズのような急激に変化するものを捉えて下図の様に誇張拡大してリンギングノイズを発生してしまいます。
これを軽減するためにコンデンサCと直列に抵抗Rsを入れ、増幅ゲインをある程度抑えて微分動作する周波数を低くして不要な高調波リンギングをカットするなどの工夫を行います。
微分回路のシミュレーション
SPICE(アナログ回路シミュレータ)を利用して動作検証を行います。
本稿では、アナログデバイセズ社が無償公開しているLTspiceを使用しています。LTspiceは、アナログデバイセズ社のサイトよりダウンロードしてご利用ください。
シミュレーションファイル
シミュレーションファイル「diff_sim.asc」を参照してください。
ファイルはzip形式です。ダウンロード後に展開して下さい。LTspiceがインストール済のPCであれば、展開後のファイルをダブルクリックするとLTspiceが起動して上記ファイルを読み込みます。
シミュレーション回路
使用オペアンプモデル
回路シミュレーションで使用するオペアンプの物理モデルパラメータは、汎用オペアンプ(LT1013:324タイプ相当)を使用しています。
シミュレーション条件
反転入力端子に1kHzの三角波を発生し、10msのトランジェント解析を行います。
●非反転端子に抵抗R3、R4により2.5Vのバイアスを与える
この回路の動作のシーケンスを説明します。
(1)初期時(t=0)、反転入力端子の電圧は B点の電圧より高くオペアンプ出力Voの電圧はVccとなります。この時、Vo=Vccなので R2, R3, R4で構成される抵抗分圧により非反転入力端子電圧は2/3×Vccになります。Voの電圧が非反転端子電圧より高いため、VoからR1を介して電流が流れ、コンデンサC1には電荷が溜まっていきます。
(2)コンデンサ電荷の蓄積により反転端子電位は上昇して行き2/3×Vccを越えると、オペアンプ出力は反転しVo=0Vになります。
(3)これと同時に R2, R3, R4で構成される抵抗分圧値は1/3×Vccになります。同時に反転入力端子電圧が下降し始め、電圧が1/3×Vccを下回ると、Voは再び反転しVccになります。
以上(1)~(3)の動作を繰り返すことによって、Vo端子は矩形波を出力し続けることになります。
シミュレーション結果
三角波入力(緑色)に対して、矩形波(青色)に微分された波形が出力されています。