技術解説 商品企画8 ~構想設計(MCU選定のポイント)~

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商品企画8 ~構想設計(MCU選定のポイント)~

ここで、マイコン(MCU)を選ぶ場合の重要なポイントを解説しておきます。

少し、MCUのおさらいをします。現在の電子機器にMCUは欠かすことのできない重要部品です。

●MCUの働きは、「MCUは、CPUをコアとした演算、計算による関数処理を実行しその結果もって周辺のハード回路を制御し機能を果たすもの」です。

●MCUは、予め用意しておいた「プログラム」に従って 計算を実行することしかできません。

MCUは、ソフトウエア(プログラム)で機能を構成します。プログラムの作り方次第で無限と言って良いほど、様々な回路機能を実現できる可能性を持つ、とても便利な回路部品です。

日増しに需要は増え続けており、半導体メーカにとって製品のエースであり、稼ぎ頭でもあります。

故に膨大な需要の見込めるMCUを開発し製造するメーカは沢山あり、MCUメーカは、どんどん新製品を市場投入し、世界中の市場でメーカどうしが凌ぎを削っています。

しかし、メーカどうしで競争競合が沢山あるということは、ユーザから見てメリットとデメリットもあります。

MCUはメーカ、シリーズ事に異なるもの

・デメリットの一つ目は、どのメーカでも「完全に同じものを製造して販売していないこと」です。

どういう事かを説明します。

言葉の上では、同じ仕様のMCUがA社とB社にあったとします。外見の仕様上は同じです。普通の専用ICであれば、メーカ間が異なっても仕様が同じであれば置き換えは簡単にできます。

しかし、MCUの場合は、そう簡単にはいかないのです。なぜならば、「A社とB社のMCUの中身のハード構造が異なる」からです。

MCUは、プログラムソフトで機能を実現しますが、中身のハード構造が違えば、プログラムを各々専用に作らねばなりません。

各々のメーカでは、製造技術や製造方法、回路技術などメーカ独自の自前技術、ノウハウがあります。それ故、製品の構造もメーカ独自に成らざるを得ないので結果的に外見上の仕様は同じでも中身は全く別物になってしまいます。

・デメリットの二つ目は、デメリットの一つ目で「中身のハードが異なる」話をしました。その為、プログラムは各メーカの製品毎に専用に作る必要があるとも言いました。

MCUは、ユーザがプログラムを開発しなければなりません。プログラムは、ソフトウエアであり、記述言語により生成します。

このソフトウエアの開発環境が問題なのです。

メーカ毎、製品シリーズ毎にソフトウエア開発ツールが異なる

記述言語(ソース)自体は、パソコンだけあればいくらでも書けます。パソコンが操作できる人ならちょっとした学習訓練で誰でも書くことはできます。

しかし、MCUは半導体集積回路であり、ハードウエアです。このハードウエア上でプログラムを実行し機能を果たすものです。という事は、各メーカ毎に、製品シリーズ毎に異なるMCU製品には、「MCU製品に対になる開発ツール」があるという事です。

開発ツール導入はお金が掛かる

ひと言で「開発ツール」といっても中身は下記の様な多くのもので構成されます。

  • ・IDE/コンパイラ
  • ・ICE/デバッガ
  • ・シミュレータ
  • ・OS
  • ・ミドルウエア
  • ・評価ボード
  • ・プログラムライタ

ハードツール単体もあれば、専用ソフトとハードがセットになるものもあります。これらの開発ツールを用意しないと、MCUのプログラム開発は出来ないのです。

また、開発ツールを一通り揃えるには、かなりのお金が掛かります。

各ツールはライセンスがあり、ツール1個に対して1人分の使用ライセンスしかありません。よって、10人が使う場合は、10人分のライセンス購入が必要です。

高機能で大規模なMCUになるほど、一人ではなく多くの設計者で分担した共同開発になりますが、大企業では数百人規模でソフト開発をすることも珍しくありません。

例え、MCU1個の値段が1,000円だとしてもこのMCUを動かすソフトウエアを開発するための開発ツールの準備で数十億円のお金が必要になることも珍しいことではないのです。

MCUの採用を決めるのは大変

新たにMCUを採用する場合は、上記で説明した様な事情がついて回るため1つの案件のためだけに、他の専用ハード部品の様に簡単に採用決定できないのです。

増して、異なるメーカ品へ置き換えともなると大変です。

従って、MCUを決める場合、回りや将来にも影響を及ぼすため慎重に良く吟味検討することが大切になります。