技術解説 詳細設計1 ~システム検証~

ブラシレスモータドライバの設計事例

詳細設計1 ~システム検証~

構想設計で考案した回路システム、構成回路をブレッドボード、MCUボードなどを組合せてバラック機を製作して実際に機能動作や基本性能を評価検証します。

電気信号処理だけであれば、回路シミュレータなどのEDAツールである程度、机上でシミュレーション評価、確認は行えます。

しかし、モータの場合、電気エネルギー⇒機械エネルギーに変換し制御を行うためモータやメカの物理モデル化がとても難しいためシミュレータや計算での確認だけで検証完了とせず、バラック機で良いので量産機に近い回路を製作し、必ず実モータを動作させての評価を行い、問題がないかを確認することが大切なポイントです。

※バラック機を製作する上でのポイント

●MCUは、市販品で機能コンパチの類似品のMCUボードを活用する。

バラック機に専用に基板を設計製作するなどの手間、時間、費用は勿体ない。機能、性能を満足する市販品や代替え冶具などがあれば、できるだけ活用する。

今回は、採用MCU LPC11U35の上位製品LPC1178を搭載した市販のMCUボードをバラック機に使用しました。

バラック機構成と製作

●MCUは、市販のmbedマイコンボード(LPC1768+orange board)を使用ソフトウエアは、本番量産機に使用するMCU(LPC11U35)に簡単に移植ができる様にコンパチ仕様で作成した。(プログラムサイズ=25kB)

●MCD TB67B001FTGは単体評価ボードを使用

※電気ブレーキ機能は省略し非搭載

バラック機回路図
バラック機回路図
設定手順と動作確認
1. DC=+12VをTB67B001FTGボードに接続

⇒動作評価では、仕様Maxの24V以上印加しても不具合はないか確認しておく。

2. USBケーブル(USB-USB MINI-B)でPCと接続

⇒5VバスパワーでMCU周りの小信号回路に電源が供給される設計。

3. モータrpm目標速度の設定

⇒外部DC電源にてアナログDC電圧を指令値として0V~3Vの範囲で入力してモータ回転速度が指令値に従って制御動作するかを確認。

例)
0V入力=0 rpm
0.75V入力=7500rpm
3V入力=30000rpm
4. モータスタート、停止制御の確認

⇒トグルSWをStart側に倒すとMCUがリセット解除されモータが回り、stop側にするとモータ停止する。

5. モータ回転速度制御の性能検証

⇒LCDに入力目標速度rpmとモータ回転速度rpmが表示される

⇒目視と並行して、

  •  FG信号値(周波数)をPCへUSBを介してUART接続し
  •  PCターミナル側へtext出力しログ保存。

得られたtextデータを後にエクセルなどで数値解析し目標回転指令値に対し実行制御値との偏差バラツキ、ジッタ特性などを確認する。

バラック機の詳細な設計回路図
バラック機の詳細な設計回路図
評価に使用したモータ

●Nidec社製3.5インチHDD用スピンドルモータ(8極モータ)(型式:59-004060-850 T23N06.27)

Nidec社製3.5インチHDD用スピンドルモータ Nidec社製3.5インチHDD用スピンドルモータ
バラックボードによるモータ駆動波形確認

●バラック機でモータ制御動作を仕様書に照らして一通りの機能確認と目標性能に対しての実力を測定確認する。

●簡易的に、MCD回りをドライヤー等で加温、冷却スプレーなどで低温~高温条件下での異常な動作などないかも確認する。

※ポイント;MCD IC表面の温度をサーモメータで測定しながら行う。

●数値評価だけでは無く、モータ駆動波形をオシロで観測し想定外の異常がないかも確認する。

バラックボードによるモータ駆動波形確認