技術解説
ステッピングモータの基本

モータ制御

ステッピングモータの基本

今回は主に位置決めなどに使われるステッピングモータの種類と構造を紹介します。

9章 ステッピングモータの制御

9-1 ステッピングモータの基本

ステッピングモータは、コイル各相に順番にパルス状に通電し、 パルス列入力に同期動作させるモータです。

運転方法としては、DCモータやブラシレスモータと異なり パルス列入力を連続すれば、予め設定した運転パターンに従い回転し、 パルス列入力を停止すれば、モータも停止します。 制御パターンで正転、逆転の制御が可能になります。 また、パルス周波数で回転速度を制御できます。 この様にパルスで制御することから、 パルスモータ、ステップモータ、ステッパモータとも呼ばれます。

ステッピングモータの種類と構造

ステッピングモータは、構造別に下記の3種類があります。

①可変リラクタンス(VR)型
可変リラクタンス(VR)型は、永久磁石を用いない構造で、 複数の歯形を持つ軟鉄製のロータ(回転子)と、 ステータ(固定子)に巻いた電磁コイルで構成されます。 ステータコイルに電流が流れると電磁力により励磁され、 ロータの歯がステータ極に引き寄せられることによって回転します。
VR型の利点は、永久磁石が必要ないことですが、 欠点は分解能を高くするには、数多く細かな歯形の精密加工と ステータとロータ間のギャップ長を短くすることが必要で 低コスト化、小型化が難しいことです。
②永久磁石(PM)型
VR型とは別に、永久磁石ロータを利用したものがPM型(Permanent Magnet stepping motor)です。 2相構造(4コイルステータと2極磁石ロータの組み合わせ)が典型です。 ロータにはVRモータのような機械歯はなく、代わりにS極とN極に磁化されています。 この磁化されたロータ極によって磁束密度が増大されているため、 PM型モータはVRモータに比べ強いトルクを発生します。
③ハイブリッド(HB)型
VR型とPM型の両方の利点を生かした複合構造のものが、ハイブリッド(hybrid stepping motor)型です。 HB型は、現在、最も普及しているものです。
ステッピングモータの基本システム
ステッピングモータの制御システム図を示します。
①パルス列指令を入力
②ステッパコントローラでA,Bコイルへの通電位相パターンをデコード
③H-SWドライバ(バイポーラの場合)で電力増幅しモータコイルを通電
オープンループ動作

ステッピングモータの最大の特徴は、 基本的にオープンループ制御で精密な位置制御が可能な点で、 ステップパルスの状況を把握するだけで、位置を知ることができます。

この場合のオープンループ制御とは、位置情報のフィードバックが不要ということです。 この特長を利用して、高価な変位センサー、エンコーダなどの部品を組み合わせた位置検出機構や、 フィードバック処理制御回路が不要になり、低コストかつ、簡単な構成で位置制御が実現できます。

ステップ分解能

ステッピングモータの仕様の一つにステップ数があります。 ステップ数は、ロータ1回転(360deg)をいくつに分割できるかを表しています。 例えば、200ステップのモータであれば、 1ステップ当たりの角度は、360deg÷200=1.8deg になります。 つまり、モータの基本ステップ分解能=1.8degと表現します。

例えば、モータ軸を90deg進めるには、 90deg ÷ 1.8deg = 50setp と50ステップ必要なので、50個のパルスを入力すれば良いことになります。

ステッピングモータの長所と短所
長所
・オープンループ制御で簡単に精密な位置決め運転が行える
・モータ回転速度は、入力パルス周波数に比例するので簡単に速度制御ができる
・モータ回転軸角度は、入力パルス数に比例するので簡単に角度位置決めができる
・モータにブラシを用いないので寿命が長く信頼性が高い
短所
・コギングが大きいので高速、急加減速運転が苦手(脱調し易い)
・コギングが大きいので連続回転時に振動リップルが大きい
・位置決め保持(ロータ停止固定)時には電流が流れ続けるため、電力消費が多く発熱が大きい
ステッピングモータの使用例

簡単な仕組みで低コスト、小型に構成できるので、 下記に示す様に民生、工業、産業用など多くの幅広い分野で使用されています。

・プリンタ、スキャナのヘッド位置決め、紙送りメカ
・スチルカメラのレンズメカ(AF,Zoom,IRIS)
・セキュリティカメラのレンズメカ、パン/チルト制御メカ
・エアコンの風向ルーバ
・スロットマシンのリールドラム
・天体自動追尾型望遠鏡の追尾モータ
・顕微鏡ステージ